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7 ミッション系

7.1 姿勢制御ミッション
 本ミッションでは,衛星の側面四方に配置されたパドルが自動的に展開し,姿勢に対する操作を始める.パドルの展開は切り離し後一定時間を経過した後,オンボードコンピュータよりニクロム電熱線に配電され,それによりパドルより機体内に引き込まれていたナイロンテグス(図7.1では鉛線)を焼き切り,固定部が無くなったパドルは根元のねじりバネによって展開する.このときパドルが適正な角度に展開するように根元に展開を制御するストッパーを設ける.展開後の操作は行わず,空力中心の変化により発生するモーメントの変化を最小にするような姿勢を維持し続けるかどうかを,加速度センサ,地磁気センサによって観測し,そのデータを地上へ送る.電熱線は安全性に配慮し,適正な電源が入っていない状態で作動しないように3重の独立した電気的インヒビットを設ける(下図では省略)




 最終的には衛星全体の空力的断面積の変化より,進行方向に先端を向けた形で方向安定が得られると考えられ,ミッション開始時から姿勢が安定するまであらかじめコンピュータでシミュレーションしておいた結果と比較し,機能の実現性を評価する.

 ここで衛星の姿勢について行ったシミュレーション結果を示す.高度300kmを周回する衛星において,周囲の大気は地上の1000億分の1の密度しか持たず,またその速度は地上の気温に換算して約マッハ22にもなるため,渦や流れのような地上で成り立つ流体に関する法則から導かれる挙動の適用範囲を超えるため,単純に気体分子が衛星に垂直に当たるものとし,それが衛星の回転に与える影響を考えた.
 まず回転角を以下のように定義した.



 これにより衛星の前面投影面積の変化はパドルの先端,本体の上端,下端のみで決まることがわかるので,それぞれの描く軌跡を合成し,以下のような曲線が得られる.なお図中の上側,下側とは図7.3の重心の上側,下側にどれだけの面積(高さ)が露出しているかを示す.衛星はLEDパネルやデジタルカメラ等各種機器が積まれる下側の方が基盤が積まれる上側より重いものとし,重心を下端より25mmの位置に設定した.



 またそれによる見かけの回転モーメントの腕の長さの変化を求めた.



 これからわかるように,回転しようとする力は90度,270度で最低を迎え,最終的なダンピングによりそこで安定するものと思われる(実際にはそれ以外にも重力傾斜やエリアルール等の影響で90度にて安定する可能性のほうが高いことが予想される).今後これをシミュレートしたプログラムを作成し,姿勢の変化を予測していく.

7.2 通信ミッション
 ミッションとしてQR コードを用いて撮影試験を行う.試験の流れとしては,

@ 地上局から受け取ったデータからマトリクス型のLED 表示器にQR コードを出力させる
A LED パネルに対向するように設置された小型カメラで撮影する
B 画像データは半導体メモリに保存させておく
C 特定タイミングで送信機を介して地上局に送信する

となっている.
 はじめに,本体内にプリセットされたもので試験を行った後,地上局から衛星に送られたデータで試験を行う.

<アップリンク(地上→衛星)>
 URL などの文字データをまずQRコード化し,その画像を1/0のビットデータとしてテキスト出力する.そしてアップリンクしやすい16進バイナリに変換して,衛星に送信する.

 地上局から衛星にデータをコマンドで送信する際,1コマンドで16x16のLEDデータが送信可能である.
 基本のQRデータは29x29もしくは25x25の予定なので,データを4分割し,1度のミッションにつき,4回のアップリンクを事前に行うこととなる.
 なお,衛星局の受信データバッファサイズが128バイトという仕様であるため,アップリンクは一度の送信につきコマンドとパラメータを含めて128バイト以内に収めたデータとなる.
 また,QRコードのパターンデータは1セルの点滅を"1"or"0"のビットで判断し,アップリンクに乗せるデータ形式としては16進数文字データとしている.
 16x16のLEDに対して16進数4文字で一行分の点灯パターンを表せるため,コマンドのパラメータとしては一度の送信につき64文字のデータを乗せることとなる.

<ダウンリンク(衛星→地上)>
 画像データは,カメラモジュール内のICにより自動的にJPG圧縮された画像が,OBCに受け渡され,そのデータをテレメトリーとして地上に送信する.
 1回で撮影される画像は1/4QR コードであるから,4回のダウンリンクをすることとなる.そして4枚の画像を調整して1つのQRコードとし,携帯電話で画像認識するとデータが復元される.

 
図7.6 QRコード

<衛星→地上 のCWのテレメトリデータの読み方>

テレメトリの内容は,

“WASEDASAT 20yymmddhhffssPppV1vvvvV2vvvvA1aaaaA2aaaaTttttSssssssssssss”

となっている.

内容の内訳は,
@WASEDASAT
 衛星名

A20yymmddhhffss
 衛星内時計情報
 20yy 年mm月dd字ff分ss秒

BPppV1vvvV2vvvA1aaaaA2aaaa
 電源情報
 Ppp:電源ICの POK、CHGの状態(各4桁)
 V1vvvV2vvvA1aaaaA2aaaa:V1の電圧、V2の電圧、A1の電流、A2の電流(各 4桁)

CTtttt
 温度情報
 Ttttt(サーミスタ電圧値(4桁))

DSssssssssssss
 磁気センサ電圧値(X,Y,Z軸(各4 桁))

である.たとえば,

WASEDASAT 20090101001010 P00010002V10004V20576A10000A20571T0542 S240425852438 

のように表示される場合,分割すると

WASEDASAT,20090101001010,P00010002,V10004,V20576,A10000,A20571,T0542,S240425852438

ということになる.